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Ⅵ-i 影絵師リュージェ
4. クロスを食べた空飛ぶ魚
リアとリュージェ
イラスト by 西田ゆうき様
イラストの無断転載・無断複製を禁じます。
リアはヴァイオリンを弾いた。陽気な音色は初めての旅の者を明るい気分にさせた。それから曲は落ち着いた穏やかなものに移った。遠い異国を回想するような音色だった。次はノリの良い、しかし異国情緒溢れる曲だった。まるで冒険を愉しむ旅人を思わせた。リアは曲が終わると、一旦手を休めた。リュージェは手を叩いた。
「素敵ですね。今の曲は、未知の国へ旅立つ冒険者が目に浮かびました、リアさん」
「はい。この曲は塔の町を探す画家の旅に付き合う詩人が創ったと言われる曲です」
「そうでしたか。その画家は異界の町に辿り着いたような終わり方でしたね」
リアは笑顔で返した。それから演奏は数曲続き、夜が更けていった。
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